うつわの秋2025 Special exhibition「陶の花 〜光は今日もふりそそぐ〜」

花司/flower artist 田中孝幸氏と深川萩作家とのコラボレーション展示

今年の「うつわの秋」は、メイン会場やサテライト会場に加えて、関連イベントもさらに充実しています。特に、10月11日〜13日の3日間で開催されるSpecial exhibition「陶の花 〜光は今日もふりそそぐ〜」では、花司/flower artist 田中孝幸氏をお招きし、深川萩作家とのコラボレーション展示を行います。

今回の企画は「光」をテーマに、深川萩の作陶表現と、田中氏の植物による空間演出が融合する特別展示です。会場では、深川萩作家・十六代 坂倉新兵衛、田原崇雄をはじめとする8作家のうつわに、田中氏が長門湯本、三ノ瀬を訪れた際に受けた土地のイメージや作品に触れた印象をもとに装花し、それぞれの器の魅力を引き出す空間を創出します。

陶の花

〜光は今日もふりそそぐ〜

会期:10月11日(土)〜10月13日(月)
時間:10:00〜16:00
会場:三ノ瀬公会堂(長門市深川湯本 三ノ瀬深川窯入り口付近)
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大学卒業後、出版社勤務を経て独学で花の世界へ。花卸市場勤務時にベルギーのアーティスト:ダニエル・オスト氏と出会い協働後、独自の活動始動。花・植物などの自然要素を表現ツールの中心に据え、文脈と物語性を重視した作品は多方面で好評を得る。
作品制作、空間デザイン、クリエイティブディレクションを中心に、国内外企業とのコミッションワーク、連載対談、企画演出など多岐に活躍。代表作には、雑誌「婦人画報」での巻頭連載『東京百花』など。東京の街や有名建築物を舞台に花をいけ、川上弘美や辻村深月など12人の女性作家からの寄稿文と共に独自の花世界を紡ぎ出した。人類学者で京都大学前総長の山極壽一、映画監督の大森立嗣、劇作家の平田オリザ等との対談「work magic NARA」、BMWやGoogleとのコミッションアートワーク、企画演出など、その他多数。
www.takayukitanaka.com

うつわの秋特別企画を記念し、花司/flower artist 田中孝幸氏と萩焼深川窯の作家・田原崇雄(田原陶兵衛窯)によるギャラリートークを開催いたします。

日時:2025年10月11日(土)16:30~
​会場:cafe & pottery音​
受付:事前予約制
定員:10名
料金:1000円(ドリンク付)

うつわの秋について

萩焼と温泉街の歴史
山口県長門市深川湯本には、約370年の歴史をもつ萩焼の窯元集落「三ノ瀬」があります。萩焼は16世紀末、毛利輝元公が朝鮮陶工を招いたことに始まり、茶道の世界で「一楽・二萩・三唐津」と称されるほど古くから愛されてきました。隣り合う長門湯本温泉も600年の歴史を誇りますが、長い歴史を持ちながらも、萩焼と温泉が一緒に何かをつくり上げる機会は、これまでほとんどありませんでした。

その転機となったのが2016年の温泉街マスタープランです。「文化体験」を温泉街の核に据える構想の中で、深川萩が地域を代表する文化として位置づけられました。旅館と窯元の若い世代が歩み寄り、ギャラリーカフェの運営を通じて対話と信頼を育み始めたのです。

「うつわの秋」のはじまり
2020年、新型コロナ禍で旅館も作家も活動の場を失った時期に、萩焼作家から「温泉街で萩焼を見てもらう機会を」との声が上がりました。これをきっかけに誕生したのが「うつわの秋」です。深川萩の全ての窯元と作家が一堂に会し、温泉街の中心・恩湯休憩室で展示を行うという、歴史上初めての試みでした。

「うつわの秋」は単なる展示会ではありません。旅人はカフェや宿で萩焼に触れ、やがて窯元を訪ねる。地域の人は日常に器を取り入れながら、お気に入りを探す。旅館スタッフも作家から学び、その経験を日々のおもてなしに生かしています。器を通じて、旅人・暮らす人・働く人が交わり、日常と旅が自然に結びつき、この場所ならではの体験が育まれていきます。

未来へつなぐ文化体験

かつて茶道が生活に根付いていた時代、人々は器を通じて文化に親しみました。現代ではその習慣は薄れましたが、代わりに「どんな人が、どんな場所でつくられたものか」に価値を見出す人が増えています。温泉地もまた、画一的な非日常ではなく、その土地ならではの文化体験を求める旅人が増えています。「うつわの秋」は、そうした新しい旅のかたちに応える営みでもあります。

伝統をただ守るのではなく、時代に合わせて表現を創造し続けること。その営みのひとつの姿が「うつわの秋」です。器を手にとり、触れ、使う。その体験が地域の文化を未来へとつなぎ、長門湯本温泉の秋を彩っていきます。